◆私たちの役割
タイマッサージの近代史について、多くの人が勘違いしています。ワットポー式やチェンマイ式などのタイマッサージは、決して2500年前から形を変えずにタイに伝わってきたマッサージ法ではありません。タイ王国は建国されてから700〜800年しか経っていませんし、チェンマイは今から50年前までタイではなくランナー王国でした。ワットポーのマッサージスタイルは1961年に、チェンマイのマッサージスタイルは1962年にオールドメディションのシントン氏によって作られたものに過ぎません。その後オールドメディシンで講師をしていた先生たちが独立し、同じものを自分のスクールで教えることになったのが現在もチェンマイにスクールが乱立している理由なのです。そう、タイ伝統医学は確かに存在していたものの、それらのマッサージは広く一般の人たちに学んでもらうために作られた暫定的なマッサージスタイルであって、これがすべてなのであれば、タイ医学はとても表面的なものになってしまいます。タイマッサージはとても気持ちよく、ある程度の効果を発揮するのも確かです。これらのスクールの存在によって、タイマッサージがメジャーになったのは紛れもない事実です。そういった意味ではこれらのスクールに敬意を表したいと思います。しかし、手順の決まったタイマッサージはタイ伝統医学の中の氷山の一角に過ぎません。要するにうわべです。これを学ぶことが伝統医学を学ぶことにはなっていないのも事実です。
伝統医学は決してその発展が止まったわけではありません。常に進化し続けているものです。過去には現代のようなストレス性疾患も存在していませんでした。添加物も放射能汚染もない中で考えられた伝統医学ですが、現代とは全くと言っていいほど環境が異なっています。ですから、疾病の治療として用いられてきた伝統医学を息づいたものにするために、私たちは研究を重ね、そのデータを後世に残す役割を果たしたいと考えています。そのために、私たちは、タイ医学に東洋医学の考えを重ね合わせることで、今困っている人たちの役に立ちたいと思っています。
つまり「鎌倉極楽寺道場」のアプローチは、伝統医学の融合による独自のアプローチであって、すでにタイ伝統医学の枠の外に在るのでしょう。TTMAはタイ古式マッサージの普及を目的として活動してきましたが、タイ古式マッサージが単なるリラクゼーションではなく、現代においても効果的な治療法として生き続けるためには、さらに進化した理論を携えて、プログレッシブなマッサージを進めていくほかにありません。マッサージは決して誰か個人の利権であってはならないと思います。国や組織のものではなく、それは人類の叡智であり、今後もそれを発展させ、後世に伝えていく使命が現代人の私たちに課せられているのだと思います。 |